写真展
In 無垢-muku-cafe
ま な ざ し
愛 注 し
僕の感性は、母のまなざしから育まれた。
幼い頃、夕焼けを見て「きれいだね」とそっと言った母の声。
その一言が、僕の見ていた景色に「きれい」という概念を与えてくれた。
人は、誰かのまなざしを通して、世界の美しさを知っていく。
感性とは、注がれた愛の記憶の積み重ねだと思う。
この写真展は、そんな “母から貰った感性”を、
僕というレンズを通して写し出した風景の記録です。
思い出してみてください。
誰かの言葉に導かれて、世界を“きれい”と思った瞬間を。
僕の写真たちが、あなたが心と向き合える居場所であってほしい。
忘れかけていた大切な記憶や、
言葉にしそびれた想いを、
今、改めて思い出すきっかけになったら一
それは、僕が写真展を開く意味そのものになると思っています。
さいごに、
今のあなたを創った、最初の “まなざし”は何だったか覚えていますか。
心に問いかけながら、写真を楽しんでくれたらうれしいです。
「 夕焼けと海光 」長部田海床路(熊本県)

風がふれて、波がほどけて、
いくつもの音がやさしくあたたかく交差する。
「海光」は、邂逅であり、懐古である。
海の光によってできたその出会いは、
どこか懐かしさを引き連れて、
押しては返し、また出会う。
陽が落ちる頃に、またあの場所で。
「 星の声 」砥峰高原(兵庫県)

その光は、
きっと何万年も前の声。
まっくらな世界のなかで、
自分の感情さえも澄んでいく。
それでもちゃんと
今の自分に届いていることが不思議で、
ただ在るその声に、
耳を傾けるように空を眺めた。
「 くれなづむ 」五島(長崎県)

暮れきれずに、とどまる空。
遠ざかるようで、まだ残る光。
五島の夕空は、やけに永く、
夕陽が今を名残惜しんでいるようにも見えた。
ただくれなづむ空を、
まだ僕も見ていたかった。
「 彩る風 」日本のどこか

どこで見たか覚えていない。
でも確かに記憶にある夕空。
視界に、風が色を塗っていく。
赤も青も、曖昧に混じり、
ただひとつの光になる。
輪郭のない美しさが、
心の奥をそっと染めた。
「 光のしおり 」福岡県

読みかけの言葉に、光がそっと挟まっていた。
花の影が揺れて、
ページの余白に時間がしみこんでいく。
あの頃感じたやさしさが、
今も静かにめくられている気がした。
進まない物語と、やわらかな沈黙。
「 積情 」鶴見岳(大分県)

青と白しかない世界に、
声も、言葉も吸い込まれていった。
季節がそっと、
由布岳の輪郭をなぞるように心に触れてきた。
ただ立っているだけで、
胸の奥に何かが静かに積もっていく。
雪も感情も、音を立てずに降りつもる。
名づけられないものが、
この景色の中で息をしていた。
「 夏が響く 」関門海峡(山口県)SOLD OUT

夜のなかに、音が咲いた。
街中を照らす大輪の花を
いつまでもいつまでも見たいと、
名残惜しんだひと夏の記憶。
鼓膜の奥で、夏がまだ響いている。
「 朝にたゆたう 」宮崎県 SOLD OUT

旅の途中でふと立ち止まった朝。
何も特別じゃないのに、
心だけがゆっくり揺れていた。
静かに自由で、
風も、笑い声も、眠気も、
全部ひかりのなかで、
やさしくほどけていった。
ひかりが肌をなでて、
呼吸が少しずつ深くなる。
まぶたも心も、朝にたゆたう。
「 焦がる頬 」阿蘇(熊本県)

雲のすき間から朝がこぼれる。
眠りと目覚めが、静かに入れ替わる時に、
光と影が肌の上ですれ違い、
頬にそっと色が灯る。
揺れるススキと、昇る朝日が
音のない景色に脈を打つ。
少しずつ焦がる頬とともに、
温度を静かに一枚に残した。
Information
写真家
Name:持田 大地
Instagramのアカウント
会場
名前:無垢-muku-cafe
住所:〒819-1321 福岡県糸島市志摩小富士961−3